
こんにちは!大阪スタートアッププロです。
創業してしばらく経ち、売上も順調に増えてきた。それなのに、「思ったほど利益が残らない」「毎日忙しく働いているのに、経営が楽にならない」と感じている方も多いのではないでしょうか。
売上が増えていることは、事業が成長している一つの証拠です。しかし、売上が増えたからといって、必ずしも利益が増えるわけではありません。
例えば、売上が増える一方で仕入代金や人件費、広告費などがそれ以上に増えていれば、利益は減少してしまいます。
また、商品やサービスの価格設定が適切でなかったり、経費の使い方を十分に把握できていなかったりすることも、利益が残らない原因になります。
創業後の経営を安定させるためには、売上を増やすことだけでなく、売上からどれだけ利益を残せているのかを確認することが重要です。
今回は、大阪で創業された経営者の方に向けて、売上はあるのに利益が残らない代表的な原因と、利益を増やすための改善ポイントについて解説します。【監修:税理士 村田幸雄】
売上が増えても利益が増えるとは限らない
まず理解しておきたいのが、売上と利益の違いです。
売上とは、商品やサービスを販売することで得られる収入のことです。
一方、利益とは、売上から仕入や人件費、家賃などの費用を差し引いた残りの金額です。
例えば、月間売上が300万円あったとしても、仕入や人件費、家賃などの費用が280万円かかっていれば、利益は20万円しか残りません。
反対に、売上が250万円でも、費用を200万円に抑えることができれば、利益は50万円残ります。
つまり、売上の大きさだけで経営の良し悪しを判断することはできません。
大切なのは、売上と費用のバランスを確認し、利益を確保できる経営を行うことです。
原因① 原価率が高くなっている
売上はあるのに利益が残らない原因として、まず考えられるのが原価率の高さです。
原価率とは、売上に対して売上原価がどのくらいの割合を占めているかを示す指標です。
例えば、飲食店の場合は食材費、小売業の場合は商品の仕入原価などが該当します。
原価率が上がると利益は減少する
例えば、月間売上が200万円の飲食店で、食材原価が60万円の場合、原価率は30%です。
しかし、食材価格の上昇などによって原価が80万円になると、原価率は40%になります。
売上が同じ200万円でも、原価が20万円増えた分だけ、利益は減少します。
特に創業直後は、仕入先との取引条件が十分に整っていなかったり、仕入数量が少なく単価が高くなったりすることもあります。
改善ポイント:原価率を定期的に確認する
原価率を改善するためには、仕入価格だけでなく、商品ごとの原価や廃棄ロスなども確認することが大切です。
例えば、次のような取り組みが考えられます。
- 仕入先や仕入条件を見直す
- 商品・サービスごとの原価を把握する
- 廃棄や在庫ロスを減らす
- 利益率の低い商品を見直す
- 必要に応じて販売価格を改定する
ただし、原価を下げることだけを優先して、商品やサービスの品質を落としてしまっては意味がありません。
顧客満足度を維持しながら、適切な原価管理を行うことが重要です。
原因② 商品やサービスの価格設定が適切でない
利益が残らない原因として、販売価格の設定も重要です。
創業直後は、新規顧客を獲得するために、競合他社よりも安い価格で商品やサービスを提供するケースがあります。
しかし、安さだけで集客しようとすると、十分な利益を確保できなくなる可能性があります。
値下げによって必要な販売数量が増える
例えば、1個1,000円で販売している商品があり、原価が600円だとします。
この場合、1個販売するごとに400円の粗利益が得られます。
しかし、販売価格を900円に値下げすると、粗利益は300円になります。
同じ4万円の粗利益を確保するためには、値下げ前なら100個の販売で済みますが、値下げ後は約134個販売する必要があります。
つまり、価格を10%下げただけでも、同じ粗利益を確保するためには販売数量を約34%増やさなければならないのです。
改善ポイント:価格ではなく価値で選ばれる
価格設定を考える際には、競合他社の価格だけでなく、自社の商品やサービスが提供する価値を整理することが大切です。
例えば、専門性の高さ、対応の早さ、品質、アフターサービスなども、お客様が商品やサービスを選ぶ理由になります。
また、原価や必要な利益を踏まえたうえで、適切な販売価格を設定することも重要です。
安く販売して売上を増やすことだけでなく、利益を確保できる価格設定を考えましょう。
原因③ 固定費が大きくなりすぎている
売上や粗利益が十分にあっても、固定費が大きすぎると利益は残りません。
固定費とは、売上の増減にかかわらず、一定程度発生する費用のことです。
代表的なものには、家賃、人件費、通信費、リース料などがあります。
売上が増えても固定費が増えれば利益は残らない
例えば、売上が増えてきたことをきっかけに、広い事務所へ移転したり、従業員を増やしたりするケースがあります。
事業拡大のために必要な投資であれば問題ありませんが、売上の増加に対して固定費が大きくなりすぎると、利益を圧迫してしまいます。
特に、家賃や人件費などは一度増やすと簡単には減らせない場合があります。
そのため、固定費を増やす際には慎重な判断が必要です。
改善ポイント:固定費の必要性を見直す
まずは、毎月どのような固定費が発生しているのかを確認しましょう。
そのうえで、現在の事業規模に対して適切な金額なのか、十分に活用できているのかを検討します。
例えば、利用頻度の低いサービスの契約や、十分に活用できていない設備などがないかを確認することも有効です。
ただし、必要な人材や設備まで削減すると、サービス品質の低下や売上減少につながる可能性があります。
単純に経費を減らすのではなく、事業の成長に必要な支出と、見直すべき支出を区別することが大切です。
原因④ 売上の内訳や粗利益率を把握していない
売上が増えているにもかかわらず利益が残らない場合、売上の内訳に問題があることも考えられます。
例えば、複数の商品やサービスを提供している場合、それぞれの利益率が異なることがあります。
売れている商品が利益を生んでいるとは限らない
例えば、次の2つの商品があるとします。
| 項目 | 商品A | 商品B |
|---|---|---|
| 販売価格 | 10,000円 | 8,000円 |
| 原価 | 8,000円 | 4,000円 |
| 粗利益 | 2,000円 | 4,000円 |
| 粗利益率 | 20% | 50% |
商品Aは販売価格が高いものの、1個当たりの粗利益は2,000円です。
一方、商品Bは販売価格が低くても、1個当たり4,000円の粗利益が得られます。
この場合、商品Aの売上ばかりが増えても、会社全体の利益は思うように増えない可能性があります。
改善ポイント:商品・サービスごとの利益を確認する
売上を分析する際には、商品やサービスごとの売上高だけでなく、粗利益や粗利益率も確認しましょう。
また、利益率の高い商品やサービスをどのように販売していくかを考えることも重要です。
ただし、粗利益率が低い商品でも、集客につながっていたり、ほかの商品と組み合わせることで利益を生んでいたりする場合があります。
そのため、商品単体の利益率だけではなく、事業全体への貢献も考慮して判断しましょう。
原因⑤ 経費を使った効果を検証していない
売上を増やすためには、広告宣伝費や人件費、設備投資など、さまざまな支出が必要になります。
しかし、お金を使うこと自体が目的になってしまい、その支出がどれだけの成果につながったのかを確認できていないケースもあります。
広告費を増やせば利益が増えるとは限らない
例えば、毎月20万円の広告費を使っているとします。
広告によって新しいお客様が増えていたとしても、そのお客様から得られる粗利益が広告費を下回っていれば、短期的には利益を圧迫することになります。
もちろん、継続的な利用につながる事業では、初回の取引だけで広告の効果を判断できない場合もあります。
しかし、少なくとも広告費に対して、どれだけの問い合わせや成約、売上が生まれているのかを確認することは重要です。
改善ポイント:支出と成果をセットで確認する
経費を使う際には、何のために支出するのか、どのような成果を期待するのかを明確にしましょう。
例えば、広告費であれば問い合わせ数や成約数、設備投資であれば生産性や作業時間の改善などを確認します。
その結果を踏まえて、継続する支出と見直す支出を判断することが大切です。
原因⑥ 経営数字を定期的に確認していない
ここまでご紹介した原因に共通しているのが、経営数字を十分に把握できていないという問題です。
売上や利益を毎月確認していなければ、原価率の上昇や固定費の増加などに気づくのが遅れてしまいます。
決算のときだけ数字を確認するのでは遅い
例えば、決算のときに初めて「思っていたより利益が少なかった」と気づいたとしても、すでに1年間が経過しています。
しかし、毎月の試算表を確認していれば、利益率の低下や経費の増加などを早い段階で把握することができます。
その結果、価格設定の見直しや経費の削減など、必要な対策を早めに実行できる可能性があります。
改善ポイント:月次で利益を確認する仕組みを作る
創業後は、売上だけでなく、粗利益、営業利益、経費などを毎月確認する習慣をつけましょう。
また、数字を確認する際には、前月や前年同月との比較だけでなく、当初の計画との差も確認することが重要です。
例えば、売上は計画を達成しているのに利益が計画を下回っている場合には、原価や経費の増加など、原因を分析する必要があります。
こうした確認と改善を継続することで、経営の精度を高めていくことができます。
利益を増やすためには「粗利益」と「固定費」のバランスが重要
ここまで、利益が残らない6つの原因をご紹介しました。
利益を改善するうえで、特に意識していただきたいのが、粗利益と固定費のバランスです。
粗利益とは、売上から売上原価を差し引いた金額です。
そして、粗利益から人件費や家賃などの販売費及び一般管理費を差し引いたものが営業利益になります。
例えば、次のようなケースを考えてみましょう。
| 項目 | 改善前 | 改善後 |
|---|---|---|
| 売上高 | 300万円 | 300万円 |
| 売上原価 | 180万円 | 165万円 |
| 粗利益 | 120万円 | 135万円 |
| 販売費及び一般管理費 | 110万円 | 105万円 |
| 営業利益 | 10万円 | 30万円 |
この例では、売上高は300万円のまま変わっていません。
しかし、原価の見直しによって15万円、経費の見直しによって5万円の改善ができたことで、営業利益は10万円から30万円へ増えています。
つまり、売上を増やさなくても、原価や経費を適切に管理することで利益を改善できる場合があるのです。
ただし、原価や経費の削減が商品・サービスの品質や従業員の働きやすさに悪影響を与えないよう、注意する必要があります。
経営者は数字を把握し、改善に時間を使うことが大切
利益を改善するためには、経営者自身が売上や利益の状況を把握し、具体的な改善策を考える必要があります。
一方で、創業直後は経営者が営業や集客、商品・サービスの提供に加えて、経理業務まで行っていることも少なくありません。
日々の会計入力や領収書の整理などに時間を取られ、肝心の経営数字を分析する時間が確保できていないケースもあるでしょう。
そのような場合には、会計事務所に記帳代行や月次試算表の作成などを依頼することも一つの方法です。
もちろん、専門家への依頼には費用がかかります。
しかし、経営者が経理作業に費やしていた時間を、営業活動や商品開発、経営改善などに使えるようになれば、その費用は事業を成長させるための投資と考えることもできます。
また、会計事務所と毎月の数字を確認することで、利益が残らない原因を整理し、改善策を検討しやすくなります。
大切なのは、経理作業そのものを経営者がすべて行うことではなく、会計数字を経営判断に活用することです。
経理業務を効率化し、経営者自身が本業や経営改善に集中できる環境を整えていきましょう。
まとめ
創業後に売上が増えていても、原価率の上昇や固定費の増加、価格設定の問題などによって、利益が思うように残らないことがあります。
そのため、売上の大きさだけで経営を判断するのではなく、粗利益や営業利益、経費の状況などを確認することが重要です。
特に創業直後は、売上を増やすことに意識が向きやすい時期ですが、事業を安定して継続するためには、利益を確保する仕組みづくりが欠かせません。
毎月の数字を確認し、計画と実績を比較しながら、原価や価格設定、経費の使い方などを見直していきましょう。
また、経理業務に時間を取られている場合には、会計事務所などの専門家を活用し、経営者自身が利益を生み出す活動に集中できる環境を整えることも大切です。
売上を増やすことだけでなく、利益を残し、その利益を次の事業成長につなげていくことを意識して経営に取り組みましょう。
次回は、「創業者が知っておきたい損益分岐点の考え方」をテーマに、毎月いくら売れば黒字になるのか、具体的な数字を使って解説します。
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